今月のことば

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平成26年12月のことば

「はからいがないのが はからい」

11月からTBSの木曜ドラマ劇場で、夫婦でがんになり余命宣告を受けた家族の実話をベースにした物語『ママとパパが生きる理由。』がはじまりました。このドラマは、幼い子供たちを抱えながら乳癌と診断され、間を置かず夫も肺癌の宣告を受けた芽生(めい)さんが、闘病や家族のことについて書き綴ったブログの内容をまとめた『私、乳がん。夫、肺がん。39歳、夫婦で余命宣告。』(大和出版)が原案となっています。

芽生さんはブログに癌の宣告を受けた後の心境や夢について「先日余命宣告を受けて、私の中で様々な変化がありました。同じものを見ても、宣告を受ける前と同じ感覚では受け取れなかったり、新しい考え方・感じ方をするようになりました」「私の夢は、夫婦2人で癌を克服して、その物語をたくさんの癌闘病中の人たちに知ってもらう事です」と書かれています。夫婦で癌になるという過酷な状況の中で、生きることの意味を見つけられ、力いっぱい生き抜かれた芽生さんの「生きる力」、「家族への愛」に多くの方が深い感動を覚えられるのではないでしょうか。

『夜と霧』で有名なフランクルというユダヤ人の精神科医は、「自分の人生の意味とは何だろう」という答えのない問いについて、「人間はむしろ人生から意味を問われているのであって、それに責任をもって答えなくてはならない」と言っています。つまり人生にはどんなときにも「なすべきこと」「実現すべき意味」が必ずあって発見され実現されるのを待っているという考え方です。芽生さんは癌という辛い人生の現実を受けて、逆に自分の「生きる意味」に気づかれたのでしょうか。

宗祖親鸞聖人は晩年「義なきを義とす」ということを度々おっしゃっておられます。義とは「はからい」のことであり、自分であれやこれや考え、悩むこと、例えば自分の人生についてその意味を考え、その価値をはかることです。親鸞聖人がおっしゃる「義なきを義とす」とは「はからいがないのがはからいですよ」、すなわち「自分のはからい=自力」ではなく、ありのままの自分自身の心の声を聞き、それに従うことが大切ですよとおっしゃっているのではないでしょうか。このありのままの自分の心の声こそが、実は仏様の声のことであり、その声に気づき任せる生き方が他力ということになると思います。

芽生さんは癌の宣告を受け自分の中でさまざまな変化があり、それまでとは違う新しい考え方・感じ方をするようになったと言っておられます。辛い人生の現実の葛藤の中から、ありのままの自分の声に出会われ、家族への愛、そして同じ病で闘病中の方々を思いやる境地へ辿りつかれました。もし自分に同じことが起こった時、芽生さんのような気持ちで生きれるかどうか。他力の生き方とは難しいものです。(宗教部)

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