光華女子学園
学園長 阿部 敏行
光華女子学園の創設者である東本願寺の大谷智子裏方(昭和天皇妃―香淳皇后―の妹君)の願いは、み仏の光に照らされて、自らも清澄にして光輝く華のような、教養の滲み出るおおらかな女性を育成したいというものでした。今から81年前の昭和15年4月に、呱呱の声を上げ、高等女学校が開学したのです。その当時は戦時中のことでもあり、女性の高等女学校進学率は10数%、女子専門学校に至ってはわずか1%そこそこでしかないという状況でありました。しかしそのような社会風潮にあって、大谷智子裏方は、将来女性が男性に伍して社会を牽引し、社会的地位の向上をはかっていくためにも、女子教育の必要性を強く願われたのです。本学園は、校訓を「真実心」と掲げ、教育の基本を、親鸞聖人が明らかにされた浄土真宗の教え、すなわち「生かされ生きていることの自覚」による人間形成に置いています。向上心(=精進)、潤いの心(=慈悲心)、そして感謝の心、すなわち「光華の心」を大切にする人間の育成であります。創立以来80年の星霜を重ねてきましたが、現在では幼稚園から大学・大学院までの人間教育を行う総合学園として、リベラルアーツ教育にも力を入れている大学を含めたすべての設置校で、宗教教育はもとより、茶道や華道に加え、邦楽や和歌、礼法など日本の伝統文化教育を実践しています。
この教育に文科省事務次官からも絶大な評価をいただきました。日本文化の理解と実践は人間性の涵養や人格の陶冶に不可欠な要因であり、かつさまざまな専門的な学びの基礎となります。もちろん、超スマート社会(Society5.0)といわれる新時代に求められる先進的な教育との融合、たとえばICT教育環境の拡充をはじめ、基幹研究の推進や教育・指導法の確立などに力を入れているのは言うまでもありません。
ところで、昨今のロシアによるウクライナへの侵攻で、無辜の民の死と、爆撃により街の崩壊した惨状が日々報道されていますが、なぜ現代社会においてこのような戦争が起こるのでしょうか。この蛮行は決して許されません。そもそも不殺生や非暴力を尊重する社会でなければなりません。誰一人取り残さないインクルーシブな社会でなければなりません。本学園の建学の精神「真実心」は誰一人見捨てないという「摂取不捨」という言葉にも通じます。私たちは常に学生生徒に真摯に向き合い寄り添い、心に響く「光華教育」の実践に取り組んでいます。そして今後とも社会から信頼され社会に貢献する学園として、その存在価値のさらなる向上にも努めてまいります。今後とも変わらぬご理解ご支援を賜われば幸甚です。