我々は常に、
信ずるは力なりということを忘れてはならぬ。(清沢満之「信ずるは力なり」)
2002.03.18
これまで様々な主義・主張(イデオロギー)が立ち現れては消えていった。それだけではなく、一人の人間を捉えた妄信が狂気となって全世界を巻き込む混乱と殺戮の引き金となったことは歴史を少し紐解けば明らかである。そこには奢り高ぶった人間(あるいは国家)の傲慢が見え隠れするが、彼らに欠けているのは、人間とは、あるいは自己とはいかなる存在であるかという認識の欠如である。その点、浄土の思想家たちは、深く自らを顧み、現在私たちが立ち至っている現状を明確に自覚すると共に(それを「機の深信」という)、いかにすれば真実に叶った生となり得るかを謙虚に学んできたと言えるだろう(同様に「法の深信」という)。このように、信じることには二つあるのだが、何よりもわれわれ一人ひとりが前者に深く思いを致し、自己(機)を顧みるのでない限り、今日そうであるように、人心も世情もいたずらに混乱するばかりで、決して真実なるもの(法)は見えてこないであろう、と説いているのが仏教なのだ。(可)