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2021年度「涅槃会」を行いました

2022.02.15

2月15日(火)、本学園慈光館太子堂にて、釈尊(お釈迦様)入滅の日(=ご命日:2月15日)に、釈尊への報恩の意を表し、み教えを改めて聞思する機会として、涅槃会が行われました。
参加者は、在校生を代表して中学1年生と教職員でした。



司会より、本尊の脇に映し出された大涅槃図を観ながら、お釈迦様が出家をされ、お悟りを開かれたことや、沙羅双樹のもとで亡くなられた様子についての説明がありました。
音楽法要、勤行に引き続き、阿部恵木理事長(学園宗教部長)による法話が行われました。

阿弥陀仏の本願についてご説明された後、おとぎ話「かさじぞう」の話を例に挙げ、人間は自分の欲望を優先させると周りが見えなくなる、これに気づき、周りを見ることができた時に、おもいやりの心を持つことができるとお話されました。
最後は、参加していた中学1年生に向けて、宗教行事等に参加し、お釈迦様の教えを学び、触れたりすることで、仏さまの願いである光華の心(向上心、潤いの心、感謝の心)を持とうと心がけるようになってほしい、と結びました。

諸行は滅びゆく。怠ることなく努めよ。 『大般涅槃経』

2022.02.01

 日本では、お釈迦さまがお亡くなりになった日を二月十五日として、各地の寺院では、お釈迦さまのご遺徳を偲び、教えを聞思する法会(涅槃会)を営んでいます。この涅槃会には、お釈迦さまの最後の様子を表した「釈迦涅槃像」や「釈迦涅槃図」をおまつりします。その像や絵図には、最後の遊行(伝道の旅)を終え、生まれ故郷のヒマラヤの麓の釈迦国への帰途、故郷を目前にしたクシナーラーの沙羅双樹の下に床を設えてもらい、疲れた体を休め、最後の説法をされました。そして、頭をヒマラヤの方角の北に向け、右脇を下にして横たわり、静かに瞑想に入り、そのまま永遠の涅槃に入られました。その時、お釈迦さまの周りには、お弟子の比丘たちをはじめ生きとし生けるものが集まり、悲しみにくれながら見守っている様子が表されています。「涅槃」とは、煩悩を克服して、さとりの智慧を完成した境地を言い、お釈迦さま(覚者)が亡くなったことを表す言葉(「入涅槃」など)としてもつかわれます。
 
 今月の言葉は、お釈迦さまの晩年の遊行、ラージャガハ(王舎城)からお亡くなりになったクシナーラーにいたる道程と、その途中の事跡や説法などを記した『大般涅槃経』にあります。お釈迦さまの死に直面し、嘆き悲しむ比丘たちに「比丘たちよ、今こそおまえたちに告げよう」と呼びかけ、説かれたお釈迦さま最後の言葉とされています。お釈迦さまは、比丘たちに、全てのものは常に変化して、少しの間もとどまっていない。生命(いのち)を受けたものは死に、形あるものは滅びる。私たちも例外ではない。これが無常の世界の真実の相なのだ。だから、こうした無常を生きる私たちは一瞬一瞬が大切であり、怠ることがないように仏道修行につとめなさい。と、説いておられるのです。この言葉は仏道修行をする比丘たちへの言葉だけではなく、無常の命を生きる私たちへの教えでもあるのではないでしょうか。(宗教部)

2022.01.07

 今月のことばは「和」です。
 皆さんもご存知のとおり仏教を日本に広められたのは聖徳太子と言われており、浄土真宗の宗祖親鸞聖人も皇太子聖徳奉讃で「和国の教主聖徳皇 広大恩徳謝しがたし 一心に帰命したてまつり 奉讃不退ならしめよ(日本に初めて仏教を説きひろめてくださった聖徳太子の広大な恩徳は、 どれほど感謝してもし尽くせるものではない。 その教えにしたがって一心に阿弥陀仏に帰命し、 敬いたたえ続けるがよい)」と詠まれたように、聖徳太子を大変尊敬されています。この聖徳太子が仏教を政治の理念とし定められた十七条憲法で、第一条を「和を以て貴しとなす」とされたことにより、仏教の目標である「和」が日本人の価値観に深く根づいたのではないでしょうか。

 
 和というと皆さん平和ということを思われると思います。世界平和は誰しもが願うことでしょうし、安らかな憩いの場としての平和な家庭を望まない人もいないと思います。また人間関係のストレスや自分の思いと現実とのギャップなどに悩まされ、心の平和を望むのも人間の普通の姿だと思います。それではこの平和を得るためにはどうしたらよいのでしょうか。多くの方が平和を望むなか、自分の思う平和で周囲を抑えつけ、自分の平和を勝ち取ろうとする人もいます。また自分が我慢し続けまるく収めることで、平和を保とうとする人もいます。これらで真の和は得られるでしょうか。勝ち取った平和には常に抑えつけられた人が出ますし、我慢し続けても人間いつかは耐えられなくなるものです。「和」とは相反するすべてのものが生かされていることを言うのではないでしょうか。青、黄、赤、白が一色に塗りつぶされるのではなく、それぞれの色が自分の存在を主張しているときにこそ調和が生じます。すべての音が生かされ、まとまってはじめて協和音が生まれます。すなわち、相反するものの中間ということではなく、「和して同ぜず」という姿こそが真の和であり、仏教でいうところの和ではないでしょうか。

 
 和を望んでやまない私たち、一方で「自分がこれほど気を使っているのに、なぜ分かってくれないの」「自分が頑張って仕事をしているから何とかこの職場はもっている」「自分の言うことは全く聞かないね」など、常に「私」を中心に考えてしまう私たち。これでは当然、和して同ぜずには程遠いと思います。聖徳太子は、十七条憲法の第十条で、「我必ず聖に非ず 彼必ず愚かに非ず 共に是れ凡夫ならくのみ」とおっしゃっておられます。「私の彼もみんな凡夫であり、同じように悩み、苦しみ、泣き、愚痴る」ということをさとるとき、「私」に執着している自分が崩れ、和につながる一歩が始まるのではないでしょうか。権力闘争の真っただ中を生きられた聖徳太子が示されたのは、我々にみなと仲良くせよということではなく、和がいかに困難なことであり、自分の心の中に和を得ることがいかに難しいかという自ら味わった経験をもとに、自らを含め、全ての人々の心のあり様の目標として「和」を掲げられたのではないかと思います。

 
 このように考えますと、「和」は相手を責めるのではなく「許す」ということです。近年、この人を「許す」ということがなくなりつつあるように感じます。自分が凡夫であるという自覚が生じた時はじめて人を許すことができ、すべての人々と和していくことができる。蓮如上人御一代記聞書に「信をえたらば、同行にあらく物も申すまじきなり、心和らぐべきなり。・・・また信なければ、我になりて詞もあらく、諍ひもかならず出でくるものなり・・・」という言葉があります。信を得る、すなわち凡夫であることの自覚が和への第一歩です。自分もこのことをしっかり意識し、心掛けていきたいと思います。(宗教部)

2021年度「成道会」を行いました

2021.12.08

12月8日(水)、釈尊(お釈迦様)が悟りを開かれた日をご縁に、釈尊のみ教えを改めて聞思する機会として、成道会(じょうどうえ)を行いました。

今回の成道会には、光華幼稚園年長児と教職員が参列し、真宗宗歌や恩徳讃などの仏教讃歌の斉唱・勤行・焼香などを行いました。

  

法話では、本学学園宗教部小椋厚太氏が釈尊のお悟りまでの道のりに触れ、生きとしいけるものが幸せになる方法として、人は自分一人の力で生きているのではなく、世の中の大きなつながりの中で生かされていることに気づかれたとお話されました。私たちはだれかをうらやましく思う時もありますが、そんな時は今日のお話を思い出し、周りの人や物に感謝の気持ちをもって過ごしてほしいと呼びかけられました。

光華もの忘れ・フレイルクリニック(認知症予防)が開院いたしました

2021.11.15

2021年11月15日、京都光華女子大学の併設施設として「光華もの忘れ・フレイルクリニック」が開院いたしました。

本院は、もの忘れ(認知症)予防等の支援により、地域の方の健康増進・地域医療の発展に貢献するクリニックとして地域住民の皆さまの心と健康に寄り添うとともに、医療・福祉に関する教育・研究を実践するための施設として活用してまいります。

本学健康科学部では看護師、管理栄養士、言語聴覚士などの専門職養成を行うなかで、医療情勢をめぐるさまざまな課題の解決に貢献できる実践力や応用力を備えた専門職養成に努めています。

本クリニックは、言語聴覚士・看護師養成のための臨地実習など、多職種連携や在宅ケアを実践しながら学ぶ教育の場として学生たちが活用していきます。
また、健康創造キャンパスの実現に向けて、認知症予防(フレイル予防)をテーマとした基幹研究を推進する研究機関として、得られた研究知見を健康科学部の教育内容に還元するとともに、地域住民の方々を対象にした認知症予防のための講習会などを開催するなど、地域貢献の一助となることを目指してまいります。

光華もの忘れ・フレイルクリニック ウェブサイト

  

  

第5回KOKA ENGLISH CONTESTを開催しました

2021.11.15

11月14日(日)、第5回KOKA ENGLISH CONTESTを開催しました。
本コンテストは株式会社わかさ生活、株式会社京都銀行、株式会社ECC、株式会社EdulinX、コアネット教育総合研究所、株式会社リクルート、株式会社LoiLo、京都新聞、京都府教育委員会、京都市教育委員会にご後援をいただき、学校法人光華女子学園が2017年度から開催しており、今回で5回目を迎えます。
英語を学ぶ子どもたちに、日頃の成果を発表する機会を提供することで、英語での表現力、コミュニケーション力を高めるとともに、英語を学ぶモチベーションの向上に寄与することを目的としています。

予選を突破しこの日の本選に進んだのは幼稚園・保育園児から高校生まで27名。
しっかり前を向いて話す堂々とした様子や発表に詰まってもすぐに立て直す冷静さなど、日頃の学習とこのコンテストに向けて積み重ねてきた練習の成果を披露してくれました。

 

京都外国語大学教授 ジェフ バーグランド先生を講師にお招きした記念講演では、「それ もっと早く聞きたかった!英語スピーチ上達法~発音・表情・ジェスチャー~」と題しご講演いただきました。会場も巻き込んだ分かりやすくユーモア溢れるお話に、参加者は笑顔で聞き入っていました。

 

今回は新型コロナウイルス感染症対策のため、入場人数の制限やマスクの着用・手指消毒を徹底したうえでの開催となりましたが、YouTubeによるオンライン生配信を行い、多くの方々にご覧いただくことができました。



【表彰結果】
◆暗唱の部A 幼稚園・保育園(年少)~幼稚園・保育園(年長)
金賞 数馬 さくらさん(年長)
銀賞 徳田 楓さん(年長)
わかさ生活賞 上倉 実桜さん(年長)
コアネット賞 龍味 恵麻さん(年長)
コアネット賞 北嶋 夏樹さん(年中)
優秀賞 廣石 建爾さん(年少)
優秀賞 本多 陽一朗さん(年長)

◆暗唱の部B 小学校(1年生)~小学校(4年生)
金賞 谷川 侑穂さん(小1)
銀賞 張 嘉翼さん(小2)
京都銀行賞 高橋 裕さん(小4)
コアネット賞 岡本 佳奈さん(小2)
優秀賞 濱野 碧依さん(小2)

◆暗唱の部C 小学校(5年生)~中学校(3年生)
金賞 谷川 和霞さん(中1)
銀賞 山形 美欧さん(中2)
ECC賞 山本 芽咲さん(中1)
コアネット賞 一瀬 由梨枝さん(小5)
光華賞 中井 洋子さん(中2)
優秀賞 馬場 柚希さん(中2)

◆スピーチの部D 小学校(3年生)~小学校(6年生)
金賞 中村 禮仁さん(小6)
銀賞 徳田 杜生さん(小3)
コアネット賞 齊藤 実和さん(小5)
EdulinX賞 大畑 那月さん(小5)

◆スピーチの部E 中学校(1年生)~高等学校(3年生)
金賞 川添 シェリさん(高2)
銀賞 宮﨑 嘉奈子さん(中3)
コアネット賞 新免 千空さん(高1)
EdulinX賞 石川 香那さん(高1)
優秀賞 松本 芭美さん(高2)

◆団体賞
京都市立高倉小学校 様
KOKA ENGLISH CONTESTに於いて5年連続参加者を輩出し、優秀な成績をのこしていただき本大会に貢献された功績を称え表彰いたしました。

光華もの忘れ・フレイルクリニック(認知症予防)を開院いたします

2021.11.09

学校法人光華女子学園(理事長:阿部 恵木)は、もの忘れ予防等の支援により、地域の方の健康増進・地域医療の発展に貢献するとともに、大学の併設施設として、医療・福祉に関する教育・研究を実践するため、11月15日(月)に「光華もの忘れ・フレイルクリニック」を開院いたします。また、開院に伴い、11月14日(日)にクリニックの内覧会を開催いたします。

急速な少子化の進展、疾患構造の変化、医療技術の先進高度化や制度的な看護業務の拡大、地域医療と在宅医療連携の問題など医療情勢をめぐる課題の解決に貢献できる実践力や応用力を備えた専門職育成が必要であるとし、教育研究に活用できるクリニックを学内に設置いたします。
言語聴覚士・看護師養成のための臨地実習または実習前のプレ実習(演習)として位置づけ、常に地域社会とリアルにつながる環境をつくりだし実践教育を行うことで、多職種連携や在宅ケア等に有効な実践力・応用力の養成をさらに推進していきます。また、健康創造キャンパスの実現に向けて、認知症予防(フレイル予防)をテーマとした基幹研究を推進するとともに、得られた研究知見を健康科学部の教育内容に還元します。

【光華もの忘れ・フレイルクリニック(認知症予防) 概要】
名称:学校法人光華女子学園 光華もの忘れ・フレイルクリニック
開院日:2021年11月15日(月)
標榜科目:脳神経内科

基本理念:早期相談によるもの忘れ(認知症)予防、フレイル予防を目的としたクリニックです。女子大学ならではの視点を生かし、地域の皆さまが安心して暮らせるよう地域包括ケアの一部として心と健康に寄り添ったクリニックを目指します。

実施内容:
・もの忘れ(認知症)予防・フレイル*¹ 予防の支援及び研究を行う。
・認知症につながる骨粗鬆症や運動機能低下、栄養不足等の予防対策を実践・研究する。
・地域包括ケアシステムで活躍できる人材の育成の場とする(大学の実習施設)。*²
・クリニックの活動を通し、得た知見を研究業績としてまとめ、発表する。
*1 フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと
*2 言語聴覚士、看護師等医療・福祉専門職の養成のために活用します。

院長:上田 敬太(京都光華女子大学 健康科学部 医療福祉学科 言語聴覚専攻 教授)
住所:〒615-0882 京都府京都市右京区西京極葛野町44
電話番号:075-325-1711
URL:https://clinic.koka.ac.jp/



【光華もの忘れ・フレイルクリニック(認知症予防) 内覧会】
当クリニックの医師・スタッフ、設備や内装などの様子やもの忘れ(認知症)予防、フレイル予防について知っていただき皆さまの不安を少しでも解消し、安心して通っていただきたく開院前に内覧会(見学会)を開催いたします。

開催日:2021年11月14日(日)
時間:受付開始10:00 15:00終了
場所:〒615-0882 京都府京都市右京区西京極葛野町44 光華もの忘れ・フレイルクリニック
内容:10:15頃~ 学長挨拶、医院長挨拶

2021年度「学園報恩講」を行いました

2021.11.05

11月5日(金)、本学園光風館講堂において学園報恩講を厳修しました。
この学園報恩講は、宗祖親鸞聖人のご命日をご縁に、聖人の恩徳を感謝するとともに、聖人の御教えを改めて聞思する機会として、親鸞聖人によって開顕せられた浄土真宗の教えを建学の精神とする真宗大谷派関係校である本学園において、最も大切にしている宗教行事です。
親鸞聖人のご命日は11月28日ですが、その日は本山東本願寺で勤められている本山報恩講のご満座(最終日)にあたるため、本学園では、阿部恵水初代中学・高等学校校長のご命日である11月7日に繰り上げて、本学園関係物故者の追悼法要とともに執り行っています。今年は、7日が日曜日にあたるため、11月5日に行いました。



各校園から、園児・児童・生徒・学生、同窓会代表、学園物故者のご遺族、教職員が参列し、園児から大学生までの代表による献灯、献花、焼香が厳かに行われました。
その後、村上 宗博 先生 (真宗大谷派 願教寺住職)による法話では、「親ガチャ」という言葉をテーマにご自身の体験を織り交ぜながら、仏教では自らを取り巻く環境は自らが決断し、生み出したものであるとされていることから、自らが選んだ親に感謝しましょうとお話しいただきました。

ひとりじゃない

2021.11.01

 「独生独死独去独来」(仏説無量寿経)仏教の言葉です。耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「ひとりで生まれ、ひとりで死んでいく。
 ひとりでこの世にやって来て、ひとりでこの世から去っていく。」
 大変寂しい響きに聞こえますが、これが私たち生きとし生ける者の命の真理とも言えます。
 
 広辞苑によれば、「人間」という言葉は、「じんかん。人の住む所。世の中。世間。」と記され、人と人との関係性を表す言葉だと理解できます。
しかし、その「人間」ですら、ヒトとしては「独生独死独去独来」なのです。況んや他の生物をや、となるのではないでしょうか。
 
 

 「バラバラでいっしょ-差異(ちがい)をみとめる世界の発見」
 今から20数年前、「蓮如上人500回御遠忌」の際、真宗大谷派(東本願寺)が掲げたスローガンです。現在、国際社会でグローバル化が進められ、盛んに言われているSDGs、持続可能な共生社会の実現に先んじたものとも言えます。「山川草木悉皆成仏」という仏教の根底にある精神こそが共生社会の実現の鍵だと思われます。
 
 

 「ひとりじゃない」

 1 人と生まれたことの意味をたずねていこう
   人はひとりでは生きていけない ほら ひとりじゃない
 
   うれしい時は 誰かが一緒に喜んでいる
   つらい時は 誰かがそばで支えてくれる
 
 

   ひとりじゃない ひとりじゃない 昔も今もこれからも
 
 

 この詩は、2年後の2023年にお迎えする「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年」慶讃テーマソングで優秀賞を受賞された串馬千聖(くしま ちさと)さんが作られました。受賞後のインタビューで串馬さんは次のように語っています。
「『自分ひとりでは何もできないよ。』 母がいつも言っている言葉を思い出しました。私も含め、若い人たちは人と関わるのが面倒くさいと思ったり、ひとりになりたいと思ったりします。しかし、たとえひとりでいたとしても、自分のことを想い、考え、見守ってくれる家族や友人、ご先祖様がいることを忘れないでおこう。そして、私も大人になったとき、家族や友人のことを想い、考え、見守れる優しい人になりたいと願い、この詞を書きました。」
 
 

串馬さんは京都光華高等学校2年生在学時にこの作詞をされました。現在は、京都光華女子大学こども教育学部に通っておられます。
 
 

 「独生独死独去独来」の我が身、我が命ではありますが、この詩のように「生まれたことの意味をたずね」ることを通して、「共生社会」の中で、「誰か」と倶に生きていければ、この上なく幸せなことだと思われます。
 
 

 串馬さんの詩は、以下のように続きます。
 
 

 2 人と生まれたことの意味をたずねていこう
   人はひとりになりたい時もある でも ひとりじゃない
 
   晴れの日 くもりの日 誰かが遠くで見守っている
   雨の日風の日 誰かが離れて祈ってくれる
 
 

   ひとりでも ひとりじゃない 昔も今もこれからも
 
 

 3 人と生まれたことの意味をたずねていこう
   決して途切れない未来へつなげていこう
 
 

   うれしい時は 私が一番に喜んであげる
   つらい時は わたしがそばで支えてあげる
 
 

   ひとりじゃない ひとりじゃない 昔も今もこれからも(宗教部)

今日こそ努め励むべきなり

2021.10.06

パーリ仏典『中部経典』の第131経「一夜賢者経」(片山一良訳『中部』第6巻、pp.136-142)の一節です。ゴータマ・ブッダは「過去を追いゆくことなかれ。未来を願いゆくことなかれ。過去はすでに過ぎ去りしもの、未来は未だ来ぬものゆえに、現に存在している法を、その場その場で観察し、揺らぐことなく動じることなく、智者はそれを修するがよい」と説いてから、上記の言葉を発しました。智者は,過去に縛られたり追憶に浸ることなく、また未来に妄想したり期待することなく、まさに今この瞬間にブッダの教えに導かれ、自分や自分の周囲にあるものごとを正しく観察することに怠ることなく励む者とされています。この言葉に対して、上座部仏教の学僧ブッダゴーサ(5世紀前半)は「『今日はまだ支障がある。明日か明後日にやろう』という気持ちを起こさず、『今こそやろう』というように精進すべきだ」と注釈します。

 
 昨年の頭から新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちは新型コロナウイルスとともに生きる世界に無理やり放り込まれたと言えます。さまざまな制約のある生活を送り、明かりが見えないことに不安を感じながら過ごしてきました。強いストレスにさらされていることから、人々の不満が社会において蓄積されています。自分こそが正義だと思い込み、他者を攻撃する人々の姿を多く見るようになりました。そのような社会の空気の中で、私たちはついついこの状況を言い訳にして、自身の「努め励むべきこと」をないがしろにしてしまいがちです。「このような状況のときに頑張っても意味がないよ」と心の悪魔がささやくのです。言い訳ばかりしてやらないといけないことを後回しにしてしまう心の弱い自分がいます。

 
 上記の経典においてゴータマ・ブッダは、自分の現実をその場その場で確かめることに揺るぎなく取り組む者を智者としています。そこに環境・社会の状況を言い訳にする姿はありません。コロナ前の世界に執着し、またコロナ後の未来を不安視し絶望することに囚われるのではなく、今ここで自分の人生を丁寧に歩んでいくことが大事なのだとこのゴータマ・ブッダの言葉は教えてくれます。この言葉に学び、簡単にあきらめの気持ちを起こすことなく、不安や苦しみが渦巻くときこそ、自分自身を見つめ直し、自身の行動、考え方を振り返っていきたいと思います。自分にとって都合の良い妄想をするのでなく、自分や周りのものごとの真実をしっかりと確かめていくことが、コロナ禍で疲れた心を元気にするためにも必要なのかもしれません。

 
 まだまだコロナ禍は続きますが、それを言い訳にして心を閉ざすことなく、一瞬一瞬の学びを大切にして、日々精進していきたいものです。(宗教部)