光華女子学園

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他人に迷惑をかけない生き方とは

 「他人に迷惑をかけたらあかんで。自分のことは自分でしいや。」と両親によく言われたものです。このことを守り、過ごしてきたつもりですが、振り返ると家族はもちろんのこと親戚や地域の方、職場の方など、周囲に迷惑ばかりかけている私がいます。それでも「周囲には迷惑をかけないように。」と今も過ごしています。皆様はいかがでしょうか。

 今から50年程前、ある12歳の少年は自らその命を絶ちました。少年の父・高史明(コ・サミョン)氏は、わが子を亡くした後、親として何ができたのか、泥濘にはまったように思い悩む日が続き、悲しみに暮れます。その後、親鸞聖人の教えと歎異抄に帰依され、「いのちの尊さ」について深く考えるようになられたと言われています。

 亡くなられた少年(岡真史さん)の自殺の理由は明らかにされていませんが、死の直前まで書き綴った詩集「ぼくは12歳」では、一見すると微笑ましいものがありつつも、寂しさや孤独を感じさせるものが含まれています。また、周囲とのコミュニケーションの難しさ、生死観が表れており、少年の繊細な感性がうかがえます。その一つにこのような詩があります。

 「ぼくの心」

 からしをぬったよ 体に そうしたら ふつうになったんだ よっぽど あまかったネ ぼくの心って

 父の高氏は、「自分のことは自分で責任を取りなさい」「他人に迷惑をかけてはいけない」ということを、息子の真史さんが中学生になった時に伝えられたそうですが、こうした言葉が息子を追い詰めたのではないかと、後に振り返って思うようになったと言われています。

 「他人に迷惑をかけてはいけない」という言葉。私も自分の息子によく使っていましたが、相手を大切に思うからこその言葉だとは思います。しかし、これを「人に頼ることはよくないこと」と解釈してしまうとどうでしょう。問題を自分で抱え込み、解決できない自分に自信がなくなり、行き場のない生き辛さの中で、生活しなければならない状況に追い込まれます。

 私たち、大人も子どもも皆、お浄土に向かう同朋であり、お互いに支え合い生きています。決して誰かの助けなしに生きていくことはできません。さまざまなご縁をいただき、そのおかげで今私はここにいる。そのことがわかってはじめて共に生きることができるのだということを、お念仏の教えによって改めて気づかせていただくのです。

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