共創という言葉は、2004年に、ミシガン大学ビジネススクール教授、C.K.プラハラード氏とベンカト・ラマスワミ氏が共著The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers(邦訳:『価値共創の未来へ―顧客と企業のCo-Creation』)で提起した概念といわれています。企業がさまざまなステークホルダーと協働して共に新たな価値を創造する概念”Co-Creation”の日本語訳であります。昨今、ビジネスの場でよく用いられ、経営方針に掲げる企業もありますが、「多くの人が協働し、新たな価値を創造すること」はビジネスの場だけでなく、私たちの日常生活にとっても非常に大切なことなのではないでしょうか。
「多くの人が協働し、新たな価値を創造する」ためには、その根底に「他者との違いを認めること」が必要です。しかし、現代の社会では、様々な情報が行き交い便利になった反面、その多くの情報が錯綜し、他者に排他的になってしまう面、また、多くの情報の中で「自身がその中で何を選び取るべきか、どうあるべきなのか」を迷い、自身の可能性に気づけないままに周囲に合わせてしまう傾向も否めません。真の「共創」は、自分自身の可能性や価値を自覚し、そして他者の可能性や価値も同様に認めた先に存在するものであると思います。
親鸞聖人が門弟に送られた手紙(御消息)に「とも同朋にもねんごろにこころのおはしましあはばこそ」という一文があります。念仏に生きる者は、他者に信頼と尊敬の念をもって「御同朋、御同行」として敬愛しあって生きていくことができると示されています。この「念仏に生きる者」を、仏教徒に限ることなく、生きとし生けるもの全ては平等という認識に立てる人としてもいいかもしれません。私たちは自我(自分が正しいと思う心)を捨てきれず日々を過ごしています。なによりも、その執着し続ける自分という存在、つまり、どうしようもない自分に気づき、その自分を認めて生きていくことが、生きとし生けるもの全てが平等だと理解する心となり、他者を受け入れ、協働するための心だと、御消息から学ぶことができます。
現在、世界では多様化・グローバル化が加速しており、我が国においても文化・価値観の異なる方々との「共生」はその重要度が高まっています。また、昨今の新型コロナウイルスの対応をめぐっても、多くの意見が飛び交い混乱を極め、私たちの日常は目まぐるしく変化をしています。このような苦境であるからこそ、他者との違いを受け入れ、認め、共に答えを導くことが大切です。それらの繰り返しによって「共創力」が高まり、新たな価値が生まれ、皆が心豊かに生きることができる社会の実現が叶うのであると信じています。(宗教部)
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