光華女子学園

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 2023年9月23日から10月8日の期間、第19回アジア競技大会が中国・杭州で行われました。各競技の選手による熱戦が繰り広げられ各国の応援にも熱が入り、感動とパワーをいただきました。さて、選手たちはよく「強い心で挑みます」とか、「最後はここの勝負です」と胸を差して心意気を現したりしますが、勝利の大きな要因の一つに、技術や体力もさることながら、最終は挫けない心を持つことが大切であることは、競技に取り組んだ方には体験的によく理解できることだと思います。心というのは、競技の世界でもそうですが、全てのことの原動力となるわけです。
 一方でその心は、私たちの体にいつも強く存在しているわけではありません。誰もが日常の生活や仕事において、事がうまく進まない、他人と比べて劣っている、思いが伝わらず相手との関係がうまくいかないなどが原因で、心が折れたり、自信を無くしたりし、その弱さが自分そのものと一体化してしまい、どうしようも抜け出すことができなくなったりします。これは決して特別なことではなく、日常的に繰り返し起こっていることですが、これらのことをどのように捉えたら良いのでしょうか。
 浄土真宗の経典「仏説阿弥陀経」※に「一心」という言葉が出てきます。一般的に「心を一つにする」「一つのことに集中する」などを意味しますが、仏教とりわけ浄土真宗では「自分の分別の心(自力)を捨てて、阿弥陀如来(他力)にこの身全てをお任せする(真実の信心)」という意味を持ちます。
 ここで、その教えの中にある「分別の心を捨てる」にフォーカスしてみます。分別とは一般的に「道理をわきまえていること」「物事の善悪・損得などをよく考えること」と良い意味で使われますが、仏教的には「比べる心」を意味し、その存在によって競争や格差を生み出し、迷いや苦悩をもたらすとしています。
 即ち、私たち人間のその小賢しい分別心は、国籍・民族・文化・能力等の違いを盾にして、自分と自分の世界を絶対化し、差別や対立を生み出すものであり、他人や自分をも傷つけることになるような、そんな心は捨てなさいと説かれているのです。
 日常的に心に降りかかる辛さやストレスの根源は、私たちの中にある「分別心」なのです。所詮人間の力はたかが知れています。たとえ人より能力が高くてもいつも上手くいくわけはなく、競争に勝ち続けることはいずれできなくなるのです。だからこそ、比較優位や競争上位のみを求めることよりも、そのような価値基準から離脱することが肝要です。もちろん精一杯ベストを尽くすことは大切で、それを否定するものではありませんが、私たち人間には限界があり、周りの人々の協力が必要なのです。
 できないことを思い詰めるより、比べることを止めそのあるがままを受け入れ、そしていっそのこと、ほかの力に頼る方が良い、そうすることにより、この身が幾分か軽くなるのではないでしょうか。
 まとめますと、「分別」とは比較する心、私の中に存在する自己中心的な固執を生み出すもので決して良くはないもの、「一心」とは、阿弥陀様に全てをお任せする信心(真実信心)であると言えます。
 変化が多く慌ただしい日常ではありますが一度立ち止まって、これらの言葉の本意について、考えていただけましたら幸いに思います。

※「仏説阿弥陀経」は、浄土真宗の根本経典「浄土三部教」の一つ。お釈迦様が一番弟子で智慧第一と言われている舎利弗(しゃりほつ)に対し、一方的に極楽浄土のありさまと極楽浄土へ往く方法を説かれているもの。その経典の中で「一心不乱に仏を念ずれば、臨終の際には必ず阿弥陀様がお迎えに来てくださる」と説かれています。(宗)

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