子に会いながら 子を知らず
今月のことばは、あるお寺の伝導掲示板に書かれていた言葉です。今の世の中の風潮を表した言葉ではないかと思います。当然の事ながら一人の子が産まれるには、必ず父と母の二人の親が存在します。そして、その親にもそれぞれ二人の親が存在します。これは、一見当たり前のように思われますが、決して当たり前のことではありません。人と人との巡り合わせ、相性などすべての条件が整ってはじめて実るものです。私たちは、この不思議なつながりに今一度思いを致す必要があるのではないでしょうか。親と子の間で「親は子を選べず、子もまた親を選べす」と言ったり、また、親子喧嘩で「好きで産まれてきたんと違う」、「産んでくれって頼んだ訳と違う」などのことばを耳にします。
しかし、赤ちゃんは産まれてくるまで、母親のお腹の中で臍の尾で母体とでつながれ母子一体でした。その身が二つになり赤ちゃんは、この世に産まれると同時に自力で肺呼吸をはじめるため、苦しさのあまり産声を上げるようです。「いのち」を引き継ぐ自立への最初の苦しみでしょうか。また、母親の出産の苦しみは、赤ちゃんを産み「いのち」を伝えるための手助けなのです。私たちは皆、このような経験をしてこの世に産まれ、今を生かされているのです。
今月のことば「親に会いながら 親を見ず 子に会いながら 子を知らず」とは、前の虚しい親子の会話を表しています。今、大切なことは、親も子もこの出産という厳粛な事実を再認識し、「いのち」を引き継ぎ、伝えてゆく者として、親子とはいえ、お互いの立場や状況を理解して行動することが大切なのではないでしょうか。そして、すべての御恩に感謝する生活を送っていただきたいと思います。(宗)
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