桜の開花とともに新たな学びの仲間を迎えて、共に新たなる第一歩を踏み出す季節となりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日を迎えられたということは、多くの先生や友人、家族、その他の有縁の方々のおかげであることをどうか忘れないでほしいと思います。これから歩まれる道は、未知との出遇いの連続となることでしょう。その中には、よき師、よき友、新たな教え、そして、これからの人生を決定する大きな出遇いもあるでしょう。人は出遇いとともに成長するものです。その出遇いを通して自分が進むべき道をしっかりと見定めてください。
この言葉は、宗祖親鸞聖人の主著『教行信証』の「総序」にある言葉です。「人生を歩むときには、本当に大切にして依り処となる真実の教えをよく聞き考えて、疑いを挟まずためらってはならない」と記されています。ただ聞くだけ、なるほどと単純に思うだけで終わるのではなく、それが人生にどういう深い意味を持つのか、自らの問題として捉えて問いを見出し思考することが大切なことであり、そのことによってその教えがかけがえのない確かな生きる依り処となり、迷わずに前へ進むことができるようになると教えています。
人生における多くの出遇いの中で、たった一人の人との出遇いが人生そのものを根底から変えることがあります。親鸞聖人においては二十九歳の時、よきひと(師)である法然上人と感動に満ちた決定的な出遇いをされました。この出遇いの感動と感謝のこころを憶念しながら、よきひとの仰せのままに人生の確かな依り処として一途に信じて、終生、その恩に応える人生を歩まれました。その親鸞聖人が最も大切にされた根本姿勢、学びの方法が「聞思」であったと言えます。よきひとの教え(=真実の教え)に一切疑念を持つことなく、確信を持って生涯ひたすら聞思されました。将に聞思して遅慮することのない姿であったと言えます。
現代社会は、経済至上主義が横行する中、偏った価値観、基準のもとですべてが評価され、その結果、多様性と公平性が失われ、分断と孤立を引き起こしています。また、ネット社会の発達により情報が氾濫し、それらに振り回されることによって何が真実であるのかを見定めることが極めて難しくなり、疑い、ためらい、自分が進むべき道を見失うことさえあります。このような社会だからこそ、絶え間なく聞思して人生を正しく照らす真実の教えを聞き思考して、その教えを自らに問いかけて自分という存在を顕かにして真の依り処を見出すことが最も大切なことだと思います。
新たなる第一歩を踏み出す皆さんには、人生のあらゆる場面、事象においてそれが自分にとってどのような意味を持つのかを聞思すること、そして、人生の依り処となる真実の教えと自分にかけられている大きな願いに出遇われることを切に願います。(宗教部)
過去のことば
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年