今月は、皆さんよくご存知の室町時代の禅僧(臨済宗)一休さんのお話しです。
一休さんはマンガにもなったように、時の将軍足利義満とのトンチ話し(屏風の虎)で有名ですが、 浄土真宗の中興の祖、蓮如聖人とも親交があり、「分け登るふもとの道は多けれど同じ高嶺の月こそ見れ 」(真理の山に向かう道は異なっても、私たちは同じ月をみている)という歌を残されておられます。
宗派間の争いが絶えない当時のことを考えると、枠に囚われない一休さんの大きさを感じることができる歌ではないでしょうか。一休という名前の由来である歌「人生は、この世からあの世のまでの間の一休み」 や数々の奇行、腐敗した宗教界への批判、悟りを開いた高僧とは思えない臨終の言葉「死にとうない」などの エピソードから伺える一休さんの人柄は、非常に人間味あふれるものであり、常に庶民とともに歩む僧として 多くの方から慕われていたことでしょう。
さて、一休さんは八十七歳という当時としては非常に高齢で亡くなられたのですが、亡くなる直前に弟子た ちに「この先、どうしても困ったとき、苦しいときに開けないさい」と一通の手紙を残されたそうです。 数年後、弟子たちが本当に困り果てその手紙を開けると、中には「心配するな、大丈夫、なんとかなる」と 書かれていたそうです。
この話しの真贋はともかく、近年、社会の構成・制度・風潮が大きく変化していく なか、仕事の悩み、家庭の悩み、人間関係の悩み、金銭の悩みなどを抱えておられる方も多いことと思います。 そして、必死に悩めば悩むほど、ますます自分の先行きを不安に思われるのではないでしょうか。
しかし、悩みや心配を抱えてつらいのはよくわかりますが、そういった悩みや心配を抱きながら何かをしても、 そうした精神状況では視野も狭くなり、結局、判断を誤り、ほとんどの場合、良い結果は得られないのではな いでしょうか。もし、皆さんが深刻な悩みを抱えておられるなら、一休さんの「あなたが心配しているような ことを心配してもどうにもなりませんよ。だいじょうぶ。なんとかなる」というアドバイスを思い返し、 つらいけど少しでも精神的にゆとりを持って落ち着いて対応していきましょう。きっとその悩みも乗り越え、 笑顔で話せるときがやってきます。(宗)
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