童謡詩人 金子みすゞさんの「このみち」の詩の一節にあることばです。
金子みすゞさんの詩は、あたたかく深くやさしさに満ちたものばかりで、生かされてあること、目に見えないものの大切さ、生きとし生けるものはみなかけがえのない尊い存在であることを教えてくれます。また、どんな相手にも寄り添い、喜び悲しみを共にする仏の心(慈悲の心)をもった方でした。
この詩の中には、金子みすゞさんが呼びかけられたものが三つあります。榎と蛙と案山子です。ひとりぼっちの榎には、仲間がいる大きな森があるから行ってみないかと呼びかけ、蓮池の蛙には、大きな海があるよと呼びかけ、寂しそうな案山子には、大きな都があるからといって誘いかけています。どれも明るく大きな世界へ一緒に踏み出そうと勇気づけています。実は、この三者とも私達人間の姿であるといえます。
私達は、時に、人間関係がうまくいかなかったり、仕事に失敗したり、つらいことや不安なことがあるとたちまち弱さを露呈して、孤独を強く実感することになります。
そんな時に「元気を出して行こう」「きっと何かあるよ」といわれると、勇気づけられ希望の光が見えてきます。また、「みんなで行こう」と誘われるとひとりではないことがわかります。 金子みすゞさんは、不安で立ち止まっている人に大きな手を差し伸べようと呼びかけられているのです。
「生きる」ということは、先の見えない、案内板のない道を行くようなものです。
その中で、私達が歩み出すべき確かな道とは、釈尊、宗祖親鸞聖人が明らかにされた仏教の教えであります。
この教えは、私達のこころの拠りどころであり、支え励ましている教えであるといえます。その教えのもと、一歩一歩着実に前へ踏み出して進んでいくことが大切なことなのです。そして、この道の先にある私たちが還って行く場所が定まると、生きることが喜びとなり、安心することができるのではないでしょうか。
金子みすゞさんは、この道の先には、やがて自分自身が還ってゆく場所、本当の安らぎのある世界、いのちの還る永遠の故郷(仏の世界)があることを確信して、そこに向かって一人ではなくみんなでいっしょに行こう、と他者と自分自身を励ましながら歩み続けられたのではないでしょうか。(宗)
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