この言葉は、浄土三部経の一つであります『仏説阿弥陀経』の中の一節で、阿弥陀仏の浄土に咲く荘厳なる蓮の花のありさまを語られた言葉です。そこに咲く青い色の花には青い光が射し青く輝き、黄色の花には黄色い光、赤い花には赤い光、白い花には白い光が射し、それぞれが光り輝いていずれもすばらしく美しくて、その香りは気高く清らかであると説かれています。それぞれの花がいのちの輝きをもっていて、自らの色そのままで光り輝いて咲くことが尊いことであると語られています。
花の色は、人間のいのち(個性)をあらわしていると言えます。私たちのいのちは、この世の中にたった一つしかないかけがえのない尊いいのちであります。同様にすべてのいのちは等しくかけがえのない尊いいのちであるとも言えます。他者と比べて優劣がつけられるものではありません。私が私に生まれたということ、そのことだけで尊いのです。条件を何一つ付け加えることなくそれそのままで尊いということです。そして一人ひとりが三八億年前の生命誕生から受け継いできた唯一人のいのちを今、輝かせているのです。但し、このいのちは決して一人で輝くことはできません。はかり知れない他の多くのいのちによって輝かせてもらっているのです。いのちはすべて支え合って輝いているということです。これが仏教で説かれる「縁起」ということではないでしょうか。釈尊は、「この世の中の生きとし生けるものは、それそのものだけで成立するのではなく、さまざまな縁、原因、条件が集まり起こって成立する。すべてのものは互いに深く関わり合い、支え合い、多くのものとつながり合ってはじめて存在する。」と覚られました。私たちは無量無数の数限りないご縁によってただ今、この瞬間に存在しているのであって、そのいのちは将に「生かされているいのち」であると言えます。私たちは、まわりの全てのいのちに支えられて生かされているいのちである、すなわち「縁起的存在」であることに目覚めることができた時にはじめて、そのいのちを真に輝かせて生きていくことができるのだと思います。
現在、世界各地で国際間、宗教間、民族間等の戦闘、紛争、テロが繰り返されて多くの尊いいのちが奪われています。大変こころが痛む悲しいことです。これらは、いのちの私物化、自己中心的なものの見方、考え方の最たるものです。このような世界情勢の中で今、私たちに願われていることは何でしょうか。それは、経典に説かれているようにすべてのいのちが等しくかけがえのない大切な存在であることが認められる世界、お互いの異質や相違を受け入れて認め合える世界、私が私であるがままに認められる世界、そしてすべてのいのちが輝ける世界、このような阿弥陀仏の浄土の世界(真実の世界)を、争いが繰り返されて痛ましくて悲しい現実に直面している現在の世界に実現していくことこそが今最も重要なことであり、私たちにかけられている大きな願いではないでしょうか。(宗教部)
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