私はくじけずに こんにちをあるく (榎本 栄一)
これは、詩人であり念仏者でもあります榎本栄一さんの詩集『群生海』の中の「あるく」という詩です。榎本栄一さんの詩は、日常の暮らしの中のどこにでもある光景をご自身の生活実感として、難しい仏教語はあまり使われずに生活者としてのことばで詠まれています。そこには、はっきりとした信念があり、私達の人生の歩み方のお手本となる詩が数多くあります。
私達は、日々の生活の中で様々な出来事に突き当たります。そして、いろいろな形で生きることの厳しさにつまずき、傷つき、不安になり、くじけそうになることがあります。その時、「孤独」を強く実感することになります。しかし、私達は、本当に孤独の身なのでしょうか。
よくよく考えてみますと、この私は、私ひとりで成り立っているのではありません。決して ひとりで生きているのではないのです。お互いに支え合い、補い合ってすべての関係性の中に あると言えます。すべての生きとし生けるものは、他者とのつながりの中でしか存在しえない のです。「私を見ていてくださる人」とは、私を支えてくれているすべてのものと言えるのでは ないでしょうか。
宗祖親鸞聖人は、仏の教えを共に仰ぎ、手を携えて同じ道を歩むものを「御同朋」と私達に呼び かけてくださっています。このようにともに同朋としてくださることが明らかになった時、孤独のいのちを越えてともにあるというつながりを見出すことができるのだと思います。
仏教における「真実の教え」は、何ものにも妨げられることのない光としてあらゆる方向に平等にはたらき、いつでもどこでも私達に届けられています。しかしながら、私達は、自己中心で自分の都合によるものさしですべてをはかっているため、その光になかなか気付くことができません。自分ひとりで輝いていると錯覚しているのかも知れません。私の無明を照らし出し、私自身の本当の姿を教えてくださり、同時に大きな安らぎを与えてくださる光のはたらきに気付くことが大切です。生きることにとまどい、闇を感じることが多い人生の中にあって、その人生を生き抜く力と勇気、そして、励ましをいただくことができる大きな光(願い)の中に自分が生きていることに目覚めることが最も大切なことだと思います。
榎本栄一さんは、仏教の教えにより、その光(願い)に呼び覚まされて、人生の厳しさに負けることのない生き抜く力と勇気をそこから得られたのではないでしょうか。(宗)
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