人は他人と比べてしまう生き物です。自分は他人と比べて劣っていると感じ、自分が嫌いだと思っている人もいるのではないでしょうか。
仏説阿弥陀経にも名前が登場する周利槃陀伽(しゅりはんだか)という仏弟子がいました。彼は釈尊の弟子でしたが、物覚えが悪く、自分の名前でさえ、なかなか覚えることができませんでした。周りからもダメな弟子だと言われ、周利槃陀伽はそんな自分を愚かに感じていました。釈尊は周利槃陀伽に、掃除をしながら「塵を払い、垢を除かん」という短い言葉だけを称え続けるように言います。周利槃陀伽は言われた通りに、毎日掃除をしながらその言葉を唱えているうちに、「塵と垢」は、教えを聞いて知恵をつけることが良いことだと思っている自分の執着心であるということに気がつきました。
人は自分の勝手な思い込みや価値観で物事の良し悪しを決めつけてしまいます。たくさん勉強して知識をつけた人が優越感や傲慢さを持つことだけでなく、周利槃陀伽のように自分はダメな人間だと感じてしまうことも、どちらも自分をよく見せよう(よく見られたい)と思う心に執われています。このような執着心は誰もが持っているもので、この「執われの心」に気づき、自己に向き合うことが大切なのではないでしょうか。
親鸞聖人もずっと自己と向き合っていた人でした。親鸞聖人は「是非しらず邪正もわかぬ このみなり 小慈小悲もなけれども 名利に人師をこのむなり」(正像末和讃)と詠まれ、教えをたくさんの人に伝えていく中で、念仏者が増え、先生と呼ばれることを喜んでいる自分を自覚し、名利心がでている自分を嘆いています。
他人と比べる必要はなく、あなたはあなただけの価値があるのです。ありのままの自分を受け入れるためにも、今回の言葉が自己と向き合い、自分を見つめなおすきっかけになればと思います。(宗)
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