見えぬものでもあるんだよ(金 子 みすゞ)
童謡詩人 金子みすゞさんの「星とたんぽぽ」の詩の一節にあることばです。
金子みすゞさんの詩は、生かされてあること、違うことのすばらしさなど、どれも慈愛に満ちた広く深く、そしてやさしさに溢れたことばで私達に語りかけてくれます。また、一切衆生すべての生き物の立場から物事を見て、すべてのいのちを我がいのちとして見つめる心を持った方でした。そのすべてのいのちに平等に注がれる眼差しは、仏の心ともいえるでしょう。
この詩は、星とたんぽぽをあげて、昼間の星も地中にある冬のたんぽぽの根も眼には見えませんが、「見えないけれどもあるんだよ、見えないものでもあるんだよ、しっかり存在しているんだよ」と詠まれています。
人はそれぞれに自分の物差しを持っています。それに合わないもの、計算できないもの、あるいは、眼に見えないもの、知らないものを往々にして否定したり、遠ざけたり、無視することがあります。しかし、この世の中は、自分の考えが及ぶことと及ばないこと、見えるものと見えないものの二つで一つなのです。その二つがあってこそはじめてすべてが成り立つのです。
金子みすゞさんは、しっかりとその両方を見る眼差しを持った方でした。そして、見えないものの中にこそ大切なものがあり、真実があるのだとこの詩を通して伝えたかったのではないでしょうか。
すべての生きとし生けるものは、数限りない眼に見える、見えない両方のはたらき、すなわち、大いなるみ仏の慈悲によって生かされていることに気付かれて、自分自身がその真っ直中の世界にいることを実感して、その慈悲の光の中に見えないけれども確かにあるみ仏の存在に気付かれていたのでありましょう。
そして、その見えないけれども確かにあるはたらき(慈悲の光)に照らされて、自分自身とまわりのすべてのものを見つづけていかれたのではないでしょうか。(宗)
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