光の自覚があろうはずがない。(高光 大船)
七月二十二日、四十六年ぶりに日本で皆既日食が観測できるとのことで、天文ファンのみならず多くの人々がよい天気になれと願いながらその日を迎えました。しかし、日食が観測できる地域はあいにくの曇り空で、一瞬でも、との希みの中でその時を待っていました。皆既日食が最も長く観察できる悪石島もあいにくの天候で、皆既日食が始まるころには雷雨に見舞われてしまいました。雲の上では日食が進み、雲を通した地上も、薄暗くなっていき、やがて六分二十秒あまりの皆既現象で真っ暗闇となりました。このように日食観測という本来の目的は達成できなかったのですが、この闇の体験について、「短い時間であったが貴重な体験でした。光のありがたさが改めて実感されました。」と、異口同音に答えられていたことが印象的でした。光の中で周りのものが見えるという当たり前と思っていた状態から、何も見えなくなって、自らをも確実に見定められない、何が起こるかわからない不安な暗闇の状態を体験し、光のありがたさが実感できたのです。
私達は、日頃からあらゆることを自らの物差しで計り、それに適わないときは、悪い、不満だ、面白くないなど、そこから生み出される悩みや苦しみ、迷いの中で生活を送っているのではないでしょうか。その生き方が、あらゆるものを正しく見ることの出来ない、暗闇の中で生きていることと同じなのです。
仏教では、この悩み、苦しみ、迷う人間の生き方を、無明の闇の大海をさまよう船にたとえ、一方仏さま(阿弥陀仏)の人知を超えた究極の智慧を「光」と現し、無明の闇を破る「恵日」と説いています。
私達は、求めて仏教を聞き、「恵日」を実感した生き方をしたいと思います。(宗)
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