人はすぐに嘘をつきます。ひょっとしたら中には、「今まで嘘をついたことがない。」と言う人がおられるかもしれませんが・・・。嘘をつくとどうなるのでしょうか。まず、つじつまが合わなくなります。バレないようにと嘘を重ねると、さらにつじつまが合わなくなり、嘘をつき続けなければならないことになります。そうするとバレないかと常に気になり、精神的に落ち着かず、いつもびくびくした状態で、楽しくない人生になってしまいます。後にバレた時には、時間の経過に応じた不幸が押し寄せてきます。
「嘘つきは泥棒の始まり」、「嘘ついたら針千本飲ます」などのことわざやわらべ歌によって、私たちは小さい頃から嘘は悪いことであるとわかっています。イソップ童話「嘘をつく子供」からは、人は嘘をつき続けると、本当のことを言っても信じてもらえないが、常日頃から努めて正直に生活すると、必要な時に他人からの信頼と助けを得ることが出来るという教訓を学んでいます。最近でも、教訓とすべき世間を騒がすある事件が起こりました。それは、当事者の問題行動はもとより、保身から生まれた「嘘」によって、周囲の信頼を大きく損なうことになり、それが引金となって、人生を変えてしまうまでの事案に発展してしまいました。
では、私たちは実際、日常生活において、嘘をつかずに生きることができるのでしょうか。これはなかなか難しいものがございます。
「嘘」は、仏教では「妄語(もうご)」と言います。「妄語」を諫める「不妄語」は「五戒(ごかい)」の一つとされ、これを破ると八大地獄のうちの大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)以上の苦しい地獄へ堕ちるとされており、それほど嘘は恐ろしい罪であると言われています。
お釈迦さまは、「大無量寿経(だいむりょうじゅきょう)」という経典において、私たちの姿を「心口各異、言念無実(しんくかくい ごんねんむじつ)」と説かれています。人の「心と口は、おのおの異なり、言っていることと、念(おも)っていることに、まことがない」という意味で、つまりは、「すべての人は、心で思っていることと、口で言っていることが異なる。だから言っていることにも、思っていることにもまことがない。嘘偽りばかりだ」とおっしゃっています。
例えば、酔っ払って帰ってきた夫が、妻から「あなた、酔っ払っているでしょ」と聞かれると、ついつい「俺は、酔ってないぞ~」と言います。ろれつが回っていないので、酔っていることはバレバレですが、それでも否定したくなって、嘘をついてしまいます。
私たちは、普段あまりにも平気で嘘をついているので、その行為に対し醜いという感覚が麻痺してしまい、嘘という自覚すらないということに気付かなければなりません。そのような嘘偽りばかりの私たちがそのまま幸せになるためには、仏教を聴聞し、愚かな自分に気づかせていただくことを、繰り返し実行するほかないと言えるでしょう。
(宗教部)
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