この言葉は、中国唐時代初期の僧・道綽禅師の言葉で、その著『安楽集』に見えます。道綽禅師は、浄土教の開拓者といわれ、親鸞聖人も「真宗七高僧」の一人として尊崇され、主著『教行信証』の末文にこの言葉を引用されています。
親鸞聖人は苦しみ悩む人間の救われる道を求められました。九歳で得度し、その後二十年間にわたって比叡山で仏道修行に励まれましたが、求めるものは得られず、やがて、阿弥陀仏の本願を信じてただ念仏することのほかに救われる道はないという法然上人の教えに遇われたのです。以降、法然上人の弟子として、本願念仏の行者としていき、獲信したその教えを多くの著書や和讃として後世の人々に残されました。
今月のこの言葉は、前に獲信し、後を教え導く法然上人と、救いの道をもとめる親鸞聖人との関係を表したような言葉です。実は、仏教はこのような関係でお釈迦様以来伝えられ、苦しみ悩む人々に応えてきたのです。親鸞聖人が、『教行信証』の末文の総結びとしてこの言葉を引用されているのは、自らの求道の経験から、後の世に生きる私たちの生き方への呼びかけではないでしょうか。
この道綽禅師の言葉は、四十二歳で乳癌を発祥してから四十六歳で亡くなるまで、苦しい闘病生活のなかで、仏法を聴聞し続けた鈴木章子さんのこの言葉を思い出します。
「道に迷ったら、たちどまって道を知っている人に尋ねるのが一番」 (宗)
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