(金子 みすゞ)
童謡詩人 金子みすゞさんの「海とかもめ」の詩の一節にあることばです。
金子みすゞさんは、慈愛に満ちたあたたかくて思いやりのあることばで、数多くの詩を残してくださいました。また、すべてのいのちに対して平等にやさしい眼差しを向けられ、常に真実を見つめる心を持ち続けられた方でした。
この詩の全体は、「海は青い、かもめは白いと思っていたが、今見るとねずみ色。みな知っていると思っていたが、それはうそでした。空は青い、雪は白いと知っていますが、それもうそか知ら」という内容です。
天候、光の反射など自然の条件次第で海の色がねずみ色に見えることがあります。また、見る人のこころの情況によって色が変わって見えることもあります。人は、境涯が変われば、ものの見方も変化していくものです。
金子みすゞさんは、知っていると思っていることが、ほんとうは何も知らなかったこと、見えているつもりでもほんとうは何も見えていなかったこと、あたりまえだと思っていることが、実は真実の姿ではなかったことに気付かれたのではないでしょうか。
すべての事象が縁によって変化する中で、真実の世界を見ることは極めて難しいことです。また、人は、自分の価値観でものごとを見て自分のものさしですべてをはかり判断しているため、正しく見ているつもりでも実は自己中心的にしか見ていないのです。
それでは、真実の世界を見るためには何が必要なのでしょうか。
そのためには、損か得かという自己中心的なものさしではなく、何がまことで何がうそかという仏のものさし(智慧の眼)で真実を見つめることが大切だと思います。そして、真実の世界に触れるためには、限り無きいのちともいうべき仏教の教えをいただくことが肝要だと思います。
金子みすゞさんが生まれたいと強く願われた真実の世界とは、すべてのものがあるがままで等しく尊い存在であることが認められる世界であり、一人ひとりが光り輝ける世界であったのではないでしょうか。
経済中心主義の世界の真直中に身を置き、自己中心のこころから離れられず、うそかまことかがわからずに迷い続けている私たちに、心の糧の大切さと人間としての本当の生き方をこの詩を通してはっきりと示してくださっているように思います。(宗)
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