だいぶ前に聴いたお話しです。
ある新進気鋭の大学の先生が、学生たちに、よく「死んだらおしまいだよ」と、饒舌に仰っていたそうです。
「人間の死後変化に、死冷、死斑、死後硬直などがある。やがては、バクテリアによる分解。残るのは骨だけ。つまり、リン酸カルシウムとタンパク質だけが残るんだ。死んだら終わりなんだよ」 というお話しだったようです。
ところが、ある日、突然、その先生の奥様が不慮の事故で亡くなられるという悲劇が起こりました。
遺されたのは、その先生とまだ幼いお嬢さんだけ。
遺されたお嬢さんが、お父さんである先生に、「お母さんはどうなったの?」と聞かれたそうです。
もちろん、先生は、常日頃仰っていた「骨だけ。つまり、リン酸カルシウムとタンパク質だけになったんだよ。」「死んだら終わりなんだよ。」とは決して言えません。
「あなたのお母さんはお星様になられたんだよ。」「いつも、あなたをお空の上から見守ってくださっているんだよ」と、咄嗟に仰ったとのことです。
事実は、「リン酸カルシウムとタンパク質」です。「お星様」は嘘。
でも、その時の言葉に間違いはなかったと先生は仰います。
これを契機として、無宗教であった先生は、宗教の世界を深く信じられるに至ったというお話しでした。
「亡くなるとは無しということではない。あらゆるものは移り過ぎていく。私も同じだ。」
「先往く者は我が前を歩き、我が道を照らし、私を照らす光となる。」
これは、真宗大谷派のあるご住職からご紹介頂いた言葉です。
これをお読みのあなたにも、この世から亡くなられた方が、今も心の中にいらっしゃるのではないでしょうか。あなたを照らしていらっしゃるのではないでしょうか。
命尽きた後、そういう光に私もなりたいものです。
お星様のように。
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