光華女子学園

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親鸞一人がためなりけり

 光華女子学園は校訓に『真実心』を掲げ、Well-Beingな社会の共創を目指し教育研究に取り組んでいます。2025年4月13日から始まるEXPO2025(大阪-関西万博)のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、本学も共創パートナーとして参加いたします。具体的には食のバリアフリー化の技術開発と普及促進をテーマとし、本学が開発した嚥下調整食・機能性食品を紹介しますので、ご期待いただければと思います。
さて、本学が目指すWell-Beingとは「これまでより少し良くなった」と実感できることを意味していますが、現代社会は皆さんにとってWell-Beingに向かっているでしょうか。例えば、急速なグローバル化やデジタル化は、多様性を認めコンプライアンスを重んじる社会風土を醸成し、人口減による労働力不足を補い、コミュニケーションの輪を拡げ、ユーチューバーなど新たな職業を生み出すなど、私たちの生活を豊かに、多彩にしてくれました。

 しかし一方で、地域特有の文化の否定、過度の社会的制裁、誹謗中傷の横行、拝金主義など負の側面も大きいのが現状です。この負の側面を生み出している原因を考えたとき、価値観の相違、勝ち組負け組、多数派少数派などによる人と人の「分断」が大きな課題であり、その分断を生み出す「人間」の問題が大きいと感じています。現代は大きな時代の変革期を迎え、私たちはゆとりがなく、疲弊し、その結果、「分断」を乗り越える知恵を出すよりも、多数派を形成することや、それに乗っていれば安心という雰囲気を生み出しているのかもしれません。しかし、例えば真偽が定かではない情報が飛び交い、それをもとに無抵抗な者に対し吊し上げとも取られかねない詰問や糾弾が続くようなことが日常で普通に起こってしまう現代社会は、仏教でいうところのまさに末法の世と言えるのではないでしょうか。
 「阿弥陀如来の誓願はひとへに親鸞一人がためなりけり」。これは『歎異抄』にでてくる、「すべてのものを救うと立てられた阿弥陀如来の願いは、自分一人に向けられたものだった」との気づきを、親鸞聖人がお弟子さんに語っておられる場面のお言葉です。私たちは、自分自身に突きつけられた問題であるのに、「わたくしたち」や「社会」の問題といったように問題の主語をすり替え、当事者意識を持たず、自分は物事をよくわかっていると悦に入ってしまう自分。これこそが自分の本質であり、煩悩にまみれた姿なのだということを親鸞聖人ご自身もやっと気づいたと語っておられるのだと私は受け取っています。問われているのは常に自分であるという自覚、そして問われている自分の姿の本質は煩悩にまみれた凡夫であり、他者もそんな凡夫の一人である。一人ひとりに優劣はなく、比べる必要もなく、ただこの世を共に生きる一人の人間・凡夫である。このことを知ることが人間らしく、自分らしく生きるための全ての始まりであると思いませんか。
 本学で学ぶ一人ひとりが浄土真宗の教えを基にする教育に触れることで、人々と共創でき、「これまでより少し良くなった」と実感できるWell-Beingな社会を創造できる人材として育って欲しいと願っています。

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