職場でもプライベートの場でも悪口をいう人が必ずいます。おそらく自分に自信がなく、不満を抱えやすい人なのかもしれません。口を開けば悪口ばかりいう人とその一方で悪口を言わない人もいます。そこで、今月は「お釈迦様と悪口男」というお話を紹介させていただきます。
あるところに、お釈迦様が多くの人たちから尊敬される姿を見て、ひがんでいる男がいました。「どうして、あんな男がみんなの尊敬を集めるのだ。いまいましい。」男はそう言いながら、お釈迦様をギャフンと言わせる為の作戦を練っていました。
ある日、その男はお釈迦様が毎日、同じ道のりを散歩に出かけていることを知りました。
そこで、男は散歩のルートで待ち伏せをして、群衆の中で口汚くお釈迦様をののしってやることにしました。「釈迦の野郎、きっと俺に悪口を言われたら、汚い言葉で言い返してくるだろう。その様子を人が見たら、あいつの人気なんて、アッという間に崩れるに違いない。」そして、その日が来ました。男はお釈迦様の前に立ちはだかって、ひどい言葉を投げかけます。お釈迦様は、ただ黙って、その男の言葉を聞いておられました。弟子たちは悔しい気持ちで、「あんなひどいことを言わせておいていいのですか?」とお釈迦様に尋ねました。それでも、お釈迦様は、ひと言も言い返すことなく、黙って、その男の悪態を聞いていました。男は一方的に、お釈迦様の悪口を言い続けて疲れたのか、しばらく後、その場にへたりこんでしまいました。どんな悪口を言っても、お釈迦様がひと言も言い返さないので、男はなんだか虚しくなってしまったのです。その様子を見て、お釈迦様は、「もし他人に贈り物をしようとして、その相手が受け取らなかった時、その贈り物は、一体誰のものだろうか。」こう聞かれた男は、突っぱねるように言いました。「そりゃ、言うまでもない。相手が受け取らなかったら、贈ろうとした者のものだろう。分かりきったことを聞くな。」男はそう答えてからすぐに、「あっ!」と気付きました。お釈迦様は静かにこう続けられました。「そうだよ。今、あなたは私のことをひどくののしった。でも、私はそのののしりを、少しも受け取らなかった。だから、あなたが言ったことは、すべて、あなたが受け取ることになるんだよ。」(出典:変わりたいあなたへの33のものがたり)
お釈迦様は、固くて強いこころで相手の悪口をすべて聞き、心で受け止めながらも言葉では言い返されませんでしたが、こころで相手にメッセージを送られました。私たちも自分自身のこころを強く持つ努力が必要です。同時に「他人は自分を写す鏡」という言葉がありますが、他人の言動を見て思うことは、自分が他人にそのように見られているということです。つまりは、他人の言動で自身の反省点を気付かせてくれたことに感謝することが大切なのではないでしょうか。(宗教部)
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