涅槃寂静(ねはんじゃくじょう) 「四法印」
本来、無常にして無我であるというこの世の理法を 体解(たいげ)するには、決して一般化をすることを許さない、まさしく個別の不安や苦悩と向き合い、その不安や苦悩を抱くことそのものが永遠の理法への反逆であるという自己否定によってのみ、到達することができるのです。そのために八万四千通りに展開されたといわれる仏教の教法の中から、我々個々の 機根(きこん)や状況に合致したものを、道しるべとして選び取るのです。
「四法印」と呼ばれる仏教の標語の最後は、そのような道程を経て得えられた、苦すなわち自我の滅却の境地を示しています。
サンスクリット語の「ニルバーナ」に起因する「涅槃」の語は、一切の煩悩の炎が吹き消された状態を意味します。生まれたら必ず死ぬという根源的な不安や苦悩を超越してみれば、そこにはただただ調和安定した「バラバラでいっしょ」とでも表現すべき「 生死一如(しょうじいちにょ)」「 自他一如(じたいちにょ)」の世界が開けます。
「涅槃寂静」なる境地を求めて、共に歩みを進めることが、仏教の本旨であります。(太)