新型コロナ感染症のパンデミックをきっかけに世界は大きく変わることになりました。そしてコロナ禍からポストコロナ時代に向けて社会全体が進み、これからの「ニューノーマル(新しい常識)の時代」に生きるということについて、しっかりと考える必要があります。ニューノーマルとは、社会に大きな変化が起こり、変化が起こる以前とは同じ姿に戻ることができず、新たな常識が定着することを指します。実は「ニューノーマル」という言葉は今出現した言葉ではありません。2000年代初頭、ネット社会が到来したことにより、これまでのビジネスモデルや経済論理が通用しなくなった後にも、またリーマンショックの金融危機の後、資本主義社会から持続可能な社会への変革が起こった時にも、このことが論じられています。
今回の新型コロナ感染症拡大後のニューノーマルは、感染リスク低減のため、人と人との接触を減らす、人と人との距離をとるなどの感染予防を前提とした社会活動・経済活動・新しい生活様式への移行となります。
ここで、日本で馴染みの深い有名な句、平家物語(琵琶法師語り手)の語り出しの句を紹介いたします。
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」この意味は、平家の時代が終了して世の中が変わったことから、この世は常に変わりゆく、「諸行無常」と、どんな人も必ず衰(おとろ)えるという「盛者必衰」を仏教的価値観において表現していますが、実はこれだけを意味しているものではありません。「この世の全てのものは絶え間なく「変化」し続けている」ということも伝えているのです。つまり、人生や命、繁栄が「無常」とあれば、この世において生命が誕生すること、発展・成長すること、人々が幸せになることなども、これまた「無常」であるということを言っています。
つまり、ニューノーマル時代への移行というのは、過去にも繰り返されたごく自然なしくみであり、それはいわゆる「無常」の世ではなく、人が幸せになるための変化であることをこの句から教えられます。
その前提において、今回のニューノーマルへの移行については、対人関係への影響が強いため、コミュニケーション不足による対人トラブルや孤独化による心的ストレスがこれまで以上に引き起こされてしまうことが危惧されます。そこで、環境の変化、その影響を受けた我々の人間関係性の変化を、自身の中(心の中)にそれぞれがうまく取り込むことが重要になると考えます。物事に対する受け入れ方や考え方、捉え方によっては、想像していたものとは全く違う景色が現れることを知るべきであり、そうすることで解決する問題も多くあると考えます。一定ではなく、状況は必ず変化する。
この平家物語の句から、無常の世に生きる知恵を授かることができます。
(宗教部)
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