不偸盗(ふちゅうとう)「五戒」
在家・出家を問わず、仏教徒であることの証しは、「五戒」と呼ばれる五つの戒めを守ることです。その第二が「不偸盗戒」です。
「偸盗」すなわち他人の財産を盗むことは、殺生・邪淫とともに人間の身に備わった根本的悪業の一つに数えられます。他宗教においても、人間が身に備えるべき基本的倫理として、「盗むなかれ」と諭(さと)されますが、仏教においては道徳を越えて、貪欲(とんよく)や瞋恚(しんに)という真実に対する叛逆の結果としての「盗み」を糾(ただ)すのです。
誤った相対的対立の娑婆の実相を、仏教者たちは盗みという行為に集約的に見ました。それは他でもない空虚な心を埋め合わせるためには、物質的補充は何ら意味をなさないという、卓見(たっけん)に基づいているのです。(太)
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