光華女子学園

今月のことば

平成24年6月のことば
ご恩というものを思わない。だから、自分でやったという思いしかない。
(細川 巌『正信偈讃仰』)

野に山に新緑が萌え立ち、生命の「めぐみ」を心身すべてで感じる季節です。
今月の言葉は、親鸞上人の開かれた浄土真宗の教え、阿弥陀如来の本願力(他力)による救いを信心せられ、自費を投じて創設した聞法の道場「巌松寮」(のち巌松会館)を中心に東奔西走、その教えを講じられた細川巌氏の言葉です。この細川巌氏の活動は、昭和十八年広島文理大学の学生であった時、当時、広島文理大学と高等師範学校の結核を患う学生の心身の療養のためにおかれた健民修練所の運営を引き受け、その土曜講座で『歎異抄』の講義をされていた住岡夜晃氏との出遭いに始まるといわれています。
細川氏は、多くのお話の中で「他力」の教えを私に伝えて下さった方へのご恩を思うことの大切さを語っておられます。それは、仏陀によって顕かにされた、煩悩に執らわれながら生きている私たち凡夫が、「南無阿弥陀仏」によって浄土に生まれることができるという「他力」の教えを、親鸞上人まで伝えてくださった多くの高僧たちへの報謝、そして、その教えを信心した「師」によって今「私」がその教えに遇うことができたことへの歓喜を語っておられるのではないでしょうか。そして、その教えを聞いていくことはすなわち自分を問うていくことであり、自分を知ることを示してくださっているからだと考えられます。そのことは、私は救われるべき「凡夫」であったことを知ることであり、その目覚めだからです。この機縁を与えてくださったご恩の大切さを語っておられるのではないでしょうか。細川氏にとって住岡夜晃氏がその人であったのかもしれません。
私たちは、教えを聞くことによって阿弥陀仏の「慈悲(めぐみ)」につつまれていることを知り、季節ごとに生命の「めぐみ」を体感し、生かされて生きる自分に気づかされるのではないでしょうか。(宗)

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