光華女子学園

今月のことば

平成28年8月のことば
「和顔愛語 先意承問」
『仏説無量寿経』より

この言葉は、宗祖親鸞聖人が真実の経典として最も大切にされた浄土三部経のひとつであります『仏説無量寿経』の中にある言葉です。法蔵菩薩が積まれた菩薩行のひとつとして、「和顔愛語にして、意(相手のおもい)を先にして承問す」即ち、相手の身になって和やかで穏やかな笑顔と慈愛に満ちたあたたかい言葉を発し、相手の気持ちを慮って先んじて動くこと、仏の智慧に支えられた菩薩はこのような生き方をされると説かれています。

私たちが人と接する時、和やかな笑顔と思いやりのあるあたたかいことばをかけて、相手の心の内を察して考え、感じて先んじて行動し、その人の思いを満たし期待に応えることができたならば、相手を穏やかで心豊かにして心と心の深いつながりを築くことができます。そのためには、先ず相手の本当の意を承って心の内を真に思いやることが肝要であります。そして、その相手の思いを満たそうとした時にはじめて微笑みと慈愛の言葉が発せられるのであり、真実の智慧と慈悲のこころを備えたものから生まれる態度であると言えます。

仏教者が日常において実践すべき徳のひとつとして「布施」がすすめられています。他者に対する慈悲のこころを何かを与えることであらわすことが重要であるとされています。物や金銭がないと「布施」ができないわけではありません。誰でもいつでも財がなくてもできる布施行があります。そのうちの二つが慈愛に満ちた柔和な顔を施すことと、こころのこもったやさしいことばをかけることです。「布施」とは慈悲の行いであり、「和顔愛語」も大切な布施行であると言えます。私たち大人は、この誰にでもできる穏やかな笑顔とやさしい言葉づかいを忘れているのではないでしょうか。この「布施」の真髄は、すべてのものを受け入れる寛容なこころと慈悲のこころ、即ち、利他のこころを備えることにあると思います。

現在、世界各地でテロ、紛争、戦闘、そして極めて残忍な事件が繰り返されて多くの尊いいのちが奪われています。大変こころが痛む悲しいことです。そこには、複雑で深くて重い問題があり、解決することは極めて難しい状況にあります。このような世界情勢であるからこそ一刻でも早く争いのない平和な世界を実現することが強く願われます。この実現に向けては、私たちにかけられているこの大きな願いをすべての人が共有することが重要であり、一人ひとりができることを考えて直ちに実行すること、そして、その輪を広げていくことが最も大切なことだと思います。

私たちにできることは、「和顔愛語 先意承問」これを自分の縁ある人から確実に実践し、その輪を広私げていくことだと思います。この実践が平和な世界の実現に向けての大切な、そして意義のある第一歩になるのではないでしょうか。(宗教部)

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