( アルベルト・シュバイツァー )
今月のことばは、ドイツ出身でフランスの哲学者・神学者・医者・音楽学者のアルベルト・シュバイツァー博士のことばです。博士は、牧師の子として生まれ、30代の頃より長くアフリカのガボンという国で医療に従事しました。自らを犠牲にして、アフリカの人々の為に献身的な活動を行ったことから「密林の聖者」とも呼ばれています。また、第2次世界大戦時の日本への原爆投下を知り核問題を中心に反戦運動を展開するなど平和への貢献が認められ、1953年にノーベル平和賞を受賞した人物でもあります。
さて、このことばは、身の周りにある命の存在やその尊さを、改めて考えさせられることばだと思います。普段の生活では、生きていることが当たり前で、命がありがたいとはなかなか考えませんが、本当は「生きようとする数多くの生命」の中で、自分自身も「生きようとするひとつの生命」なのです。連綿と続く命のつながり、そして命の躍動を感じる能動的なことばだと思います。今、ここに生かされている命は、自分の思いを超えて生きたがっているのだと、そう願う無限の集合体の中で自分は生きているのだと思うと、まるで宇宙に浮かぶ無数の星々のひとつの星に自分がなったような、はてしない命の広がりを感じます。博士はまた、命あるものすべてを価値あるものとして尊敬しよう、そして共に生きようという「生命への畏敬」という考え方を残しています。これは、宗教を超え、すべてに通じることです。
残暑厳しい中、蝉の鳴き声もヒグラシのものへと変わりました。蝉の寿命の短さ故か、その鳴き声は、精一杯命をふりしぼるように聞こえます。
松尾芭蕉の句に、「やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の声」というものがあります。命の儚さ、無常を感じる句ですが、同時に命の輝きを考えさせられる句です。
今年は、未曾有の災害により多くの生きとし生けるものの命が失われました。多くの人が命の重さ、尊さを強く感じた年になったのではないでしょうか。
今、まさに、当たり前にある命の、存在の大きさに気づかされます。(宗)
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