ものごとには原点というものがあります。「あらゆる展開がそこからはじまり、すべての展開がそこに帰する」これが原点というものです。「原点に立ち帰ろう」「原点を見つめなおそう」という言葉をよく耳にしますが、原点についての理解が曖昧になり混乱すれば、おのずと意欲も薄れ、行動も行き詰まりますし、また、他者からも不審の目を向けられることにもなりかねません。しかし、原点に立ち帰ってみれば、「やはりこれが本当だ」という具合に、自らの意見もおのずと帰すべきところに落着き、進むべき方向も開けてくるものであります。
話は変わりますが、親鸞聖人によって開かれた真宗の教えは、およそ750年以上もの時を経て、今日の私たちの時代になお伝えられています。日本のありようが、社会の仕組みが、また、人々のものの考え方や価値観がいかに変わろうとも、その時代々の人々に真宗の教えが脈々と伝承され、人々にまことの救いをもたらし続けてきたのは、教えの「原点」がしっかりしていたからです。そしてその上に、その原点こそが自分の一生を支えてくれた「まこと」であると、その原点を繰り返し繰り返し尋ねてくださった先達がおられたからこそであります。ではその原点とはなにか? それは『歎異抄』第2章の書き出しの一節「各各十余ヵ国のさかいをこえて、身命をかえりみずして、たずねきたらしめたもう御こころざし、ひとえに往生極楽のみちをといきかんがためなり…」からうかがい知ることができるのではないでしょうか。このお話しについてはまたの機会に…。(宗)
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