「あの人はいいな、、、」「どうして自分は、、、」など、私たちは他人と比較をしてしまいます。自分と人を比べることは、時として自分を奮い立たせる場合もあるため、一概に批判できるものではありませんが、マイナス思考に陥り、常に生き辛さを抱える大きな要因にもなりうると思います。今年の3月に発表された「2024年_世界幸福度ランキング」において、日本のランキングは143カ国中51位という結果でした。その中の項目の一つである「人生の主観的満足度」のみを切り取ると日本の順位は110位であったということです。また、日本人はセルフコンパッション(自己に対して、いつくしみの目を向ける指標のようなもの)の度合いが他国と比較し圧倒的に低いという研究結果もあるようです。
仏教では「自然」を「じねん」と訓じます。「自ら然る」(人間の作意のないそのままのあり方)という意味であり、「あるがままであること」の大切さを教えてくれています。しかし、私たちはそんな自分や他者を都合のよいように操作できると考え、他者と比較してしまいます。その繰り返しが、現代の「生きづらさ」や「幸福度の低さ」につながっているように思えてなりません。
親鸞聖人は、あるがままの自分でいることができず、他者との比較や自己評価に苦しむ私たちのあり方を「煩悩具足の凡夫」と教えてくださっています。「凡夫」とは,自分自身の「ものさし」に気づくことができず、自分や他者、物事を都合のいいように計ったり、誤った見方をしたり、驕り高ぶる私たちをさします。親鸞聖人は、その自分を否定するのではなく、「凡夫」である自分自身を自覚することが必要だとしています。そう自覚することで、自分中心の閉ざされた心が他者へと開かれ、劣等感や自己評価による苦しみから少しずつ解放され、「あるがままの自分」を受け入れる一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。これはいわば「自分と和解する」ことだと言えると思います。
自分自身の欠点やコンプレックスなども含め、あるがままの自分を受け入れ、他者を思いやるように自分をも否定しない姿勢、すなわち「自分と和解する」ことが本当の意味での幸せにつながるのではないでしょうか。
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