自己(じこ)とは何(なん)ぞや。
これ人生(じんせい)の根本的(こんぽんてき)問題(もんだい)なり。
(清沢満之「臘扇記(ろうせんき)」)
これ人生(じんせい)の根本的(こんぽんてき)問題(もんだい)なり。
(清沢満之「臘扇記(ろうせんき)」)
時は明治、真宗大谷派の僧侶清沢(きよざわ)満之(まんし)(一八六三 - 一九〇三)を中心に、「精神主義」という新しい信仰運動が始まりました。今からさかのぼること一世紀、一九〇一(明治三四)年のことです。
文明、個人主義、はたまた快楽(かいらく)主義が時代にうずまくなか、満之は、人々のあらゆる苦悩(くのう)は、世の中の諸物(しょぶつ)(他者)を欲望(よくぼう)するために起こると考えました。だから、他者に惑(まど)わされない「自己」と成(な)ること、それが、「人生の根本的問題」だと自覚したのです。
世に、街に溢(あふ)れて、「私」を魅惑(みわく)する物、モノ、mono、もの。「持ちたい」と欲する心、「持てない」と羨(うらや)む心・・・。「欲する『私』とは、一体何者・誰(だれ)?」。知らず知らず自分に問いたくなるのは、“自分らしさ”を見失いそうになっているという“あせり”からなのかも・・・。
春、四月。学園に集(つど)うすべての人たちが、みずみずしい希望を胸にこの正門をくぐる時節(とき)。それぞれの場所で、「自己とは」と問うことから、初めの一歩を標(しる)したいものです。
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