今月の言葉は、自坊の年中行事や年忌法要を勤める時にお話する内容でもあり、私自身の課題の一つでもあります。「自らを見つめ直す」ということです。これは、良いことも悪いこともすべて含めて自分自身を知るということではないかと思います。良いことについて振り返ることは容易いことですが、逆に悪いことについて振り返ることほど勇気のいることはないと思います。
どうしても私たちは自分自身にとって都合の良いように物事を考えてしまいがちです。自らに尺度を設け、その基準の中で善悪を決め、行動に移します。果たして、その基準は誰にとってのものであり、その基準は正しいのでしょうか。言うまでもなく誰でも嫌な思いをした経験を思い出したくないのは当然のことです。このことは、プライベートでもビジネスでも同じことが言えるのではないでしょうか。しかし、自分にとって都合の悪いことを振り返り、見つめ直すことこそが自分自身を成長させ、そして、はじめて他者に対して思いやりのある気持ちや接し方ができるのだと思います。
では、いつのタイミングで自らを見つめ直すのかということですが、私は自坊で毎夕のお勤めの際に一日の出来事について振り返るようにしています。皆さんにおかれましては、ご自宅のお仏壇の前で手を合わせる際に見つめ直すのも一つですし、有縁者の年忌法要(法事)や学園の宗教行事などで自らを見つめ直すのも一つだと思います。
先にも言いましたが、この繰り返しは、簡単なようで非常に難しいことです。しかし、このことの実践により自らの利点や欠点を知ることができ、自身の成長にも繋がり、同時に一日一日の生活が当たり前でないことに気付くことができると思います。
天台宗を開かれた伝教大師最澄上人(767~822)が書かれた「山家学生式」の冒頭に「一隅を照らす」というお言葉があります。どのような意味かと申しますと、「各人が夫々の立場、持ち場においてその責任をしっかり果たせる人になってほしい。その人がいるだけでほんのその周囲だけでも明るく暖かくなるような人になってほしい」ということです。
まさに自らを見つめ直すことのできる人、その実践こそが「一隅を照らす」人ではないでしょうか。(宗)
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