衆生(しゅじょう)無辺(むへん)誓願度(せいがんど)「四弘誓願」
仏教が釈迦牟尼仏陀によって明らかにされてから、2,500年の歳月が経ちます。当初は、世の真理を悟るためには、家庭や仕事を捨てて、出家者として厳しい修行に身を置くことが求められました。ところが釈尊が世を去られ数世紀が経つと、繁栄の世の中で仏教に帰依する人々は、仏陀の慈悲を尊びつつ、社会のために働くことの中に、自己の解脱(げだつ)を見ようとするようになりました。老若男女を問わず、あらゆる人々を受け止めようとするこの仏教運動が、「大乗仏教」です。
さらに仏教が真理であるというのなら、たとえ自ら修行のできない人や仏教に背く人々でさえ、救われるはずだとする考えが生まれました。我々一人一人には、無条件に救い取らずにはおかないという、仏の願いが掛けられているとする人間観です。それに応えて、我々と共に仏の世界に誘われようとする、理想的人格としての「菩薩」の願いが、「四つの弘い誓願」の名のもとに纏(まと)められたのです。その第一節が「衆生無辺誓願度」です。
「一人も取りこぼすことなく、衆生を救済すると誓う!」という菩薩の願いにすがることが、大乗仏教の極致なのです。(太)