親鸞聖人が「和国の教主」と尊崇された聖徳太子は推古天皇三十年(六二二)二月二二日、四八歳で亡くなられました。そのご一生は国家として定まらない日本を近隣国が認める平和な国家にするための「国づくり」につとめられました。『十七条憲法』や「冠位十二階」の制定、遣隋使の派遣、『天皇記』『国記』など国の歴史の編さんなどです。聖徳太子はその実現のために最も大切なのが「人づくり」であり、そのためには人間を正しく理解することと考えられました
「今月のことば」は、太子が到達された人間理解を示された言葉です。それは仏教の説く人間理解の言葉でした。「我は必ずしも道理に通じた聖人ではありません。また、彼は必ずしも道理の通じない愚かな人ではありません。人は共に凡夫です。」との理解でした。即ち、人間の平等性であり、どんな人間も執われ(我執)から離れられず、煩いや悩みの中に生きる「凡夫」であるとの領解でした。太子はこうした「人間とは」を明らかにした仏教こそが人間の依るべき教えであると捉えられました。同『十七条憲法』第二条には仏教を、「四生(生きとし生けるもの)の終帰(よりどころ)、万国の極宗(究極の教え)」と記し、「仏・法・僧に帰依しまつらずは、何をもってか枉(まが)れるを直さん」と、仏教に基づく国家の実現を目指されたのでした。
自ら「人は共に凡夫です。」の言葉を語る時、金子大栄先生の「人間を考えるときには、自分も中に入れなければ考えられない。」の言葉を思いだします。(宗教部)
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