情報化社会の中で様々な意見を受け取り、また発信しやすくなった世の中で、その反面、自分の意見と異なるものや新しいものを受け入れられず、人々がぶつかり傷つけ合うような場面を見聞きします。SNS上での炎上や誹謗中傷などはその主な例であると言えます。
「こうあるべきだ」「これだけは譲れない」など、それぞれの「良い」とか「真っ当」言わば「正しさ」がぶつかり合っています。世界各地で絶えない紛争や政治的対立も根底にあるこの心理が大いに影響しているのではないでしょうか。
「正しさとはなにか?」に答えを求めようとする行為そのものが、非常に危険なのではないかと感じます。私たちは自分の「普通」「当たり前」にこだわり、それ以外のものを認めることが苦手です。仏教では、「こうでなければならない」という思い込みや期待のことを「執着」と呼び、苦しみの原因とされています。永続しないもの(無常)に価値や意味を固定しようし、執着が生まれ、そのことが期待や不安、失望を誘発し、心が乱されます。
私たちはつい、自分の価値観こそが正しいと思い込みがちですが、仏教は「諸行無常」、すべてのものは移り変わると説きます。固定観念に執着せず、他者の考えや立場を受け入れる柔軟さを持つことが、争いや傷つけ合いを減らす第一歩になるのではないでしょうか。「正しさ」を競い合うのではなく、違いの中に学びを見出す心のあり方が、現代社会においてますます求められます。「こうじゃないといけない」を一度脇に置いて、違いをそのままに認め合う姿勢こそ、心の平穏と調和ある社会への鍵であると、仏教の教えは私たちに示してくれています。
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