日本仏教の母山と尊称される比叡山延暦寺を訪れると,「忘己利他慈悲之極」の額や言葉が各所で見聞きされます。今月の言葉です。この言葉は,平安時代初期日本天台宗を開かれた伝教大師最澄(七六七~八二二)の言葉です。最澄はそれまでの自己の解脱(迷いの苦しみから解き放たれること)を目的とする仏教から実践的な救済の仏教すなわち,生きとし生けるもの全てが救われていくという仏教・天台宗の実現を目指しました。その学生(僧)養成の制式をあらわした『山家学生式』の中に示された言葉です。
この言葉は,天台宗の僧の在り方を示す言葉であると同時に一人の人間としての在り方を示しているのです。「忘己」=自分のことは後にして,まず「利他」=他者を幸せにする行い,つまり我欲が先に立つような生活ではなく,常に他の人のためにとの心をもっている人を養成したいとの最澄の願いを表した言葉です。その姿は「慈悲の極み」即ち慈とは,慈しみの心であり人の幸せを願う心です。悲とは人々の声にならないようなうめき声を聞き取り,救わずにはおれないという心で,「み仏の心」ということができます。
光華女子学園は「仏教精神に基づく女子教育」を建学の精神に掲げて「清澄にして光り輝くおおらかな女性の育成」を目指して創設されました。そして,校訓を「真実心」と掲げています。「真実心」は如来(仏)のみ心のことをいい,慈悲の心と言いかえることができます。「思いやりの心」「寄り添う心」「他者への配慮」「共に支え合う心」と言うことができるのではないでしょうか。この「慈悲の心」の自らへの実現は,み仏の願いに常に自らを問いかけ自我に偏した生き方を改めていくことです。今月の言葉は光華女子学園の教育の願いでもあるのです。(宗教部)
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