よい人にめぐりあってくれと おのずから涙がにじんでくる」
(坂村真民)
今月のことばは、20世紀を生きた仏教詩人である坂村真民(さかむらしんみん)の「めぐりあい」という詩の一節です。この詩は、「人生は深い縁(えにし)の 不思議な出会いだ」ということばで始まり、「めぐりあいの ふしぎに てをあわせよう」ということばで結ばれています。子に対する無条件の愛情、これから起こりうるであろう困難への心配や幸せへの期待。よき人に巡り合い、長い人生を心豊かに生きてほしいと願う切実な気持ちが伝わってくる一文です。
人は無数のご縁の中で生きています。私たちに起こるすべての事象は、ご縁があって与えられたものであり、そのすべてを受けとめ生きていかなければなりません。時になぜこんなに辛いことが起きるのか、と悲観することもあります。しかし、また、人生は出会いの繰り返しで、人との出会いが今の自分を作り上げているのだとも感じます。当たり前に受けていた父母の愛情、価値観の違う人との出会い、時には対峙、厳しい叱責や生涯忘れることのできない印象的なことば、これらすべて一人で生きていたら体験できないことであり、なによりこれまで決して一人で生きてきたのではないことを思い知らされます。
出会いが自分の方向性を大きく変えてくれたこともあります。あの人なしでは今の自分はいないなと感じる出会いもありました。振り返ると一抹の後悔とともに、感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。出会いの持つ力の大きさは量りしれません。そして数限りないご縁の中で、今自分と関わっていただいているすべての人たちとの出会いに、それが決していい関係が結べなかったご縁であったとしても、何かしらの必然を感じざるを得ません。
中島みゆきさんの「糸」という歌の歌詞に、「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれない」ということばがあります。糸にたとえ、人と人とのつながりが交差し合い、それは、あたたかい感情や何かを限りなく生み出す力があるのだと伝えてくれます。
子が生まれ、子は親に願われ生きていく。命の連鎖の中で、自分は尊い命を生きて欲しいと深く願われ生きてきました。そして今、自分もご縁を尊び、願いをつないで生きていくのだと、実感しています。(宗)
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