光華学園

今月のことば

7月のことば
すべての衆生を仏の知へ向かうように励ます

 この一節は、「迦葉品」(Kāśyapaparivarta)で示される菩薩の四つの道の一つです。他にも、すべての衆生に対して「平等の心があること」「平等に教えを説くこと」「正しい行いを実践すること」が示されています。このように「迦葉品」では、菩薩とはどのような存在であるかが説かれています(長尾雅人『大乗経典9 宝積部経典』2003、p.23)。

 大乗経典では、菩薩という理想像が描かれるようになりました。菩薩とは、「菩提を求める衆生」という意味を持ち、菩提とは、仏陀の悟りを指します。菩薩は自らの悟りを求めるだけでなく、すべての衆生とともにその菩提を目指す存在として描かれています。

 菩薩の歩みは、仏との出遇いから始まります。大乗経典では、その仏との出遇いが重要なテーマとなっています。そして、菩薩自身が仏と出遇い、仏道を歩み始めたように、衆生にも仏と出遇い、その教えを身に受け、自らの歩みに生かしてほしいと願い、はたらきかけます。そのため菩薩は、衆生と仏との出遇いの機縁をつくる存在として描かれています。

 冒頭の「迦葉品」の一節も、衆生が仏と出遇い、仏の教えに触れる道を歩むことができるように、人々を導く菩薩の姿を説いたものです。菩薩は、生きとし生けるものの能力や境遇をはかることなく、仏の教えを伝え、一人でも多くの衆生が仏と出遇えるようにはたらきかけを続けます。

 このような菩薩像を、単なる教義上の理想だと捉えてしまうこともできますが、私たちの人生経験の中にも、その姿を思わせる人との出遇いがあります。迷ったときに進むべき道を示し、真実を伝え、自分の生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれる人との出遇いです。私にとって、そのような存在の一人が恩師です。最終講義の際、「教員は菩薩行をしなければならないのだ」と語られた言葉が、今も心に残っています。大乗仏教の菩薩の姿に触れるたびに、その言葉の意味を改めて考えさせられます。私自身は、そのような菩薩の姿には程遠いと感じていますし、なれるはずもないのですが、それでも、誰かが仏と出遇えるように、仏の教えを伝えていくことの意味を改めて考えさせられるのです。

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